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オバマ大統領就任――ワシントンDC、4年に1度の舞踏会

Obama_at_the_ball_2米国では大統領就任時に、祝賀ダンス・パーティーを開く慣習がありますが、その時々の大統領の意向によって規模や形式に違いが出てくるようです。今回のオバマ大統領の就任に当たって、連邦議会に設置された就任式運営委員会(Presidential Inaugural Committee:PIC)が把握しているだけでも、全米で1,000以上のパーティーが開催されていたそうです。主催者は、政府、企業、党関係者、オバマ支持者、大学学生グループなどさまざま。この中で大統領が事前に出席を表明し、PICがその開催・運営・セキュリティなどのコーディネートに全面的に参画するものを「公式、または公認の」大統領就任祝賀ダンス・パーティーと呼んでおり、1月20日の就任式当日の夜、これらがワシントンDC内10ヶ所で開催されました。今日は、このことについて少し詳しくお伝えしたいと思います。

どうして10ヶ所ものパーティーを開催するのか
ほとんどのパーティーが夜7時ごろスタートしたようですが、オバマ夫妻が最後の会場にようやく到着したのは深夜12時半頃だったそうです。出席者はオバマを一目見ようと高いパーティーチケットを購入してきているわけですから、深夜を過ぎようが何しようが、帰るわけにいかないですよね。このパーティーの区別の仕方については、
「そういった慣習である」という以外に、1)それぞれのパーティーが一定のコミュニティを対象としている(例:正副大統領出身州関係者、軍関係者、全米各地域ごとの関係者等)、2)スペースの問題、があるようです。(写真は、パーティーで踊るオバマ夫妻。Photo Source: Reuters)

具体的な区割りの説明に入る前に、今回のオバマのパーティーの特徴について触れておきましょう。事前報道で最も話題になったのが、一般選挙民も正副大統領一行と一緒に祝いの席を分かち合う趣旨でオバマが歴代大統領初の試みとして開催した「Neighborhood Inauguration Ball」であったかと思います。これまで大統領公認パーティーは、ワシントンのインサイダー、全米各地の有力者(地方の有力政治家や有力選挙サポーター)、またこのメンバーらによって特別招待された方のみが出席を許される閉鎖的、特権的なものとして知られてきました。一般出席者に門とを開くことによって、オバマ流の「CHANGE」をここにも吹き込もうとしたということでしょうか。同パーティーの他にも、オバマ選挙キャンペーン支持の一大勢力となった若手層を対象にした「Youth Ball」、さらに、就任式前日19日の夜には、子供たちを対象とした「Kids’ Concert」(正副大統領の夫人と子供達のみの出席だったので、公認パーティーとしてはカウントされていない)が開催され、ワシントン政治への関与度や年齢などを超えて、より広い層を祝賀パーティの輪に巻き込もうとする試みが見られました

パーティの概略
カッコ内に示されている数字は、前日
19日現在、ワシントン・コンベンション・センターで各会場の準備関係者が明かした予想客数規模です。また、1)~10)の順番が、そのままオバマ一行が各会場を回った順番となっています。パーティー会場のローケーションの都合もありますが、オバマの各パーティー出席への優先順位がある程度反映されているかと思います。それぞれの会場で過ごした時間は、前半5ヶ所、オバマに直接関係が深い会場で比重が高く、後半5ヶ所(各地域ごとのパーティー)では、ほんの数分間の形式的な顔見せに留めています。


1)Neighborhood Inauguration Ball (3,500)
会場:Walter E. Washington Convention Center(Hall D)
対象:ワシントンDC在住者を優先とする一般選挙民。事前に1,000枚のタダ券が、IPCによって地元NGOなどを通して配布されている。残りチケットについては、一部がIPC特設ウェブサイトを通して一枚$25で販売されたようである。

2)
President Obama Home States Ball (5,650)
会場:Walter E. Washington Convention Center (Hall E)
対象:オバマ大統領の出身州、縁のある州であるイリノイ州、ハワイ州の招待者が、チケット(一人$150)を購入の上出席可。

3)Commander-in-Chief’s Ball
会場:National Building Museum
対象:米軍関係者――現役兵、予備兵、戦傷兵(パープル・ハート勲章受賞者)とその家族、戦死した英雄の家族――が特別招待客として無料で出席。

4)Youth Ball
会場:Hilton Washington
対象:1835歳の招待客が、チケット(一人$75)を購入の上で出席可。

5)Vice President Biden Home States Ball (3,950)

会場:Walter E. Washington Convention (Ballroom)
対象:バイデン副大統領の出身州・縁のあるデラウェア州、ペンシルバニア州の招待客がチケット(一人$150)を購入の上出席可。

6)Mid-Atlantic Ball (7,160)
会場:Walter E. Washington Convention Center (Hall A)
対象:中部大西洋地域(MD, VA, DC, NY, NJ, WV)の関係者、海外在住民主党員、招待客がチケット(一人$150)購入の上出席可。

7)Western Ball (11,100)
会場:Walter E. Washington Convention Center (Hall B)
対象:西部地域(AK, CA, ID, MT, OR, WA, WY, AZ, CO, NV, NM, UT, OK, GUAM/AS)の関係者、招待客がチケット(一人$150)購入の上出席可。

8)Midwestern Ball (6,150)

会場:Walter E. Washington Convention Center(Hall C)
対象:中西部地域(KS, IN, IA, MI, MN, ND, NE, OH, SD, WI, and MO)の関係者、招待客がチケット(一人$150)購入の上出席可。

9)Southern Ball (10,000)
会場:DC Amory
対象:南部地域(AL, AR, FL, GA, KY, LA, MS, NC, SC, TN, and TX )の関係者、招待客がチケット(一人$150)購入の上出席可。

10)Eastern Ball
会場:Union Station
対象:東部地域(CT, ME, MA, NH, RI, VT, PR, and USVI)の関係者、招待客がチケット(一人$150)購入の上出席可。

パーティーのチケット購入

それぞれのパーティーの出席には、3)軍関係者のパーティーを除く全てで事前のチケット購入が必要でした。パーティー2)5)については、元から非公開、もしくは、特別招待客で会場収容能力に達してしまったようですが、1)6)10)のパーティーについては、チケット購入に成功した幸運な一般客も一部混じっていました。

それでは、誰が実際にチケットを購入できたのでしょうか。今回の一連のパーティーでは、オバマ大統領が「一般選挙民もこれらのパーティーに出席する機会を作る」との意向が明確であったため、「ある程度」チケットの購入情報は一般公開されましたが、それでも、大多数のチケットは従来通りそれぞれのパーティを取り仕切る関係者によって特別招待者に配布されたようです。

特別招待リストの掲載者には、招待状の送付とともにチケットを事前購入できる特設ウェブサイトへのIDとパスワードなどが発行されていたようです。全てのケースに当てはまるか定かではありませんが、これら事前購入対象客については、より優先的な扱いを受ける代わりに、パーティー運営への寄付金を加算されたチケット価格設定がされていたようです。例えば、一枚$500のチケットでは自分の住所のある地域のパーティーにのみ出席可能、一枚$1,000のチケットでは各地域のパーティーの中から希望上位3つから1つに出席可能、$2,500のチケットでは第一希望の地域のパーティーにVIPとして出席可能といった具合です。

一般客に対しては、PICのウェブサイトに、提携するオンライン・チケット購入サイトへのリンクが予告も通知もなしに当日の一週間ほど前に掲載されました。就任式が間近に迫り、ドタバタの中で一般チケット購入の段取りを整えたようで、同サイトの存在、購入の仕方、残りチケットの情報、チケット受け取りの情報などについて、無数の噂が飛び交い、大混乱が生じていました。PICの段取りの悪さは否めませんが、オバマの「一般選挙民も参加できるパーティにする」との意向に関する事前報道に一般客が過剰期待しており、現実に想定されていた一般客の受け入れキャパと実際に一般公開されたチケット数との間にギャップがあり、大きなフラストレーションを引き起こす原因になったのではないかと私は思います。


パーティーに出席していた日本人はいる?

若干名いらしたと耳にしていますが、正確には分かりません。わざわざこのために、日本から来られた方もいらしたとか(もちろん、就任式を見て、そのついででということでしょうが)。当日のパーティーの人出は、各会場で数千人から1万人を超えるところもあり、出席状況の把握は容易ではありません。もし出席者がいたとすれば、大きく分けて二つのグループが考えられます。一つは、上述した一般公開チケットを個人で運よく$150で購入できた人のグループ。これは、少数派だと思います。アメリカ人の間でも相当苦労されていたようですから。もう一つは、主催者の招待者リストに入っており、事前に優先チケットを確保できた人のグループです。

後者グループの場合、特に6)10)の地域ごとのパーティーに招待されるケースが多いようです。ブッシュ(息子)の就任時にパーティーに出席したことのある方に話を伺ったところでは、招待者リストの作成の根拠は定かではないが、例えば、ある州で自社の現地工場などが大々的に展開していて地元経済に重要な役割を果たしている場合、州政府や地元企業の有力者とのつながりが深く、地元でも主だったイベントへ招待があり、こうしたリストによって、ワシントンでの地域別パーティーにも誘いがかかるのではないか、とのことでした。

大統領をこの目で見たい!というミーハーな気持ち以外に、パーティー出席に何か意義はあるのでしょうか。パーティー主催者の超VIPとして出席し、有力者どうしの社交の場として楽しむことができないのであれば、個人としての記念や満足で終わるのではないかと想像されます。パーティーではろくな食べ物や飲み物も出されず、たいていが別料金を支払ってプラスチック容器でワインをすする羽目になる。会場は数千人から1万人を超す大混雑で、目当ての有力者を見つけることもできなければ近づくこともできない。余興に呼ばれる歌手や役者たちも、必ずしも自分の好みと一致するとは限らない。それでも、ヨーロッパに比べ正装のダンス・パーティーが格段に少ない米国において、4年に1度、ワシントンと全米の有力者をあげての大社交界は、貴重な機会と見る人もいるかもしれません。

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