地球高齢化時代― 21世紀の「成長の限界」

今年2月ごろから執筆参加していた共著本が、来週6月24日、小学館から発売が決まりました。全国の書店から店頭展示のため数千部の事前予約が来ているそうですので、もしかしたら、あなたの街の本屋さんでも手に取っていただけるかもしれません。

今年3月初めにアメリカ・ワシントンDCから日本に帰国して、これが初仕事でした。日本の一般読者の方々へ、「「地球高齢化」を専門にする中嶋という若手研究者がいる」ことを知っていただく、名刺代わりのような一本です。本屋さんで見かけたら、(立ち読みでもいいですので・・・)是非手にとって読んでいただきたいと思います。

============

3・11で現実化した「成長の限界」が日本を再生するCover_2

日本を襲った東日本大震災。かつて驚異の成長を成し遂げた経済大国の産業が、エネルギーが、暮らしが、あっけなく崩壊した。それは、「成長」神話にもとづいて、ひたすら資源を浪費し利潤拡大を追い求めてきた現代文明の終焉の姿である。地球規模での「成長の限3界」はどこまで迫っているのか。日本はこの試練からいかに再生すべきか。各界の論客たちが熱い議論をくり広げる!

体裁: A5判/192ページ/2色
発行・発売・定価: 発行 小学館クリエイティブ 発売 小学館 定価 1,400円(税込)


目次:

第一部 <3・11で現実化した 日本の「成長の限界」> Flyer

「成長神話の崩壊を超えて成熟国家としての再生へ」
浜 矩子  同志社大学大学院教授

「アメリカ型大量消費文明からの決別を」
高野 孟  『インサイダー』 編集長

「「成長パラノイア」が支えてきた近代資本主義」
川北 稔  大阪大学名誉教授

第二部 <グローバル時代の 「成長の限界2・0」>

「2030年に迫る地球の臨界点」
柴田明夫  丸紅経済研究所 代表

「「成長の限界2.0」の超克に苦悶する地球経済」
浜 矩子  同志社大学大学院教授

「地球高齢化時代― 21世紀の「成長の限界」」
中嶋圭介  戦略国際問題研究所(CSIS)研究員・神戸市外国語大学講師

「3・11後の日本のエネルギー選択」
石井 彰  エネルギー環境問題研究所代表
     (石油天然ガス・金属鉱物資源機構 特別顧問)

「地球が養える「食料の限界」」
柴田明夫  丸紅経済研究所代表

「「中国の時代」という幻想が崩れ去る日」
富坂 聰  ジャーナリスト

「原子力発電の限界?」
武石礼司  東京国際大学教授

第三部 <1970年代に起こった 「成長の限界1・0」>

「「成長の限界」から40年」
枝廣淳子  環境ジャーナリスト

「ローマ・クラブの「成長の限界」を検証する」
武石礼司  東京国際大学教授

|

2011年一般教書演説 ― 2012年大統領選モードに入ったオバマ

今年もやってきました、恒例の一般教書演説。私なりに演説の印象やポイントを以下に書き止めてみました。


政治的立場を一部取り戻したオバマ政権

P012511ps0738

今年の一般教書演説を迎えるに当たっての重要な背景の一つとして、秋の議会選挙大敗で失墜したオバマ政権の政治的立場と、それ以降の回復基調を押さえておく必要があるだろう。要因として二つ。一つは、民主党多数議会のレイムダック期における成果。ブッシュ減税と失業保険特別支給期間の延長、 “Don’t Ask. Don’t Tell.” のスローガンで有名な米軍における同性愛者を実質的に排除してきた慣行を撤廃、ロシアとの軍縮条約 (New START) の批准など、多数党交代まじかの短期間の成果としては、申し分ない。

二つ目は、アリゾナ州トゥーソンの銃乱射事件の政治的影響。事件当初は、党派間の政治戦に油を注ぐ様子が見られたが、これを沈静化させ、党や政治思想を超えた「アメリカ」の下に団結し直す上で犠牲者追悼式でのオバマのスピーチは、多くの米国民の心に響く影響力の高いスピーチとして好評を博した。

演説作成チームは、この回復基調を残り二年の任期、2012年の大統領選に向けて投影させような、ポジティブ、未来志向の論調、語調を意図したと見られる。


議会多数党が交代する現実への対処

もう一つ背景として押さえておくべきは、レイムダック期にオバマ大統領が、共和党多数議会対応に向けて政権体制をシフトしたことだ。選挙大敗直後にオバマ政権が、ブッシュ減税・失業保険の問題で共和党陣営の要求に妥協を見せ始めた時には、オバマ大統領は、政策志向をより中道にシフトしながら共和党の協力を仰ごうとする「クリントン路線」をたどるのではないかと憶測されたものだが、その後の展開から二つのオブザベーションが挙げられる。一つは、オバマ政権が、新議会を迎えるまでに、党派間争いの鎮静化に務めたこと。二つ目は、レイムダック期のように今後も共和党議会との妥協点は出てくるであろうが、それが必ずしも「クリントン路線」を取ることにはならないであろう、という点である。オバマは、政権の政策志向を丸々シフトしていく気は無く、ピンポイント、ピンポイントでプラグマティックな意思決定を見せていくものと見られる。つまり、譲れるところ、譲れないところを明確にしつつ、協力できるところ、合意できるところで躊躇を見せず、そこから成果を狙おうとする姿勢である。

こうした党派間争いを鎮静化させる政権の意思と共和党多数議会とプラグマティックな政策意思決定によって成果を積み重ねようとする姿勢を反映する教書演説だった。


所属議員ごとに座る伝統を破る

P012511lj0392

今年の教書演説では上下院議員らが、これまでの所属党ごとの席配置の伝統を初めて破って、各自が決めたパートナーらと一緒に座ったことが大きな話題となった。米高校生らの卒業ダンスパーティ (plum party) になぞらえて、議員らは、「(教書演説へ誘う・一緒に座る)相手はもう決めた?」と盛んに問いかけられ、メディア各社は、当日の席順を紙面やウェブでクローズアップした。こうした一連の動きも、オバマ政権の党派争い鎮静化への意思を、議員らが汲み取ったものと見ても良いかもしれない。

但し、教書演説は、ワシントン政界のレッド・カーペットであり、一夜限りのお祭り的要素、雰囲気がある。通常業務に戻った議会でどこまで超党派アプローチが見られるかは、別問題。教書演説の夜が明けて、早速始まった各委員会運営の様子を見ると、見通しはあまり楽観できそうにない。


国内政策志向、競争力強化と雇用創出に力点、具体策ではなく枠組みとインスピレーション

演説内容の分析に際する基本的な見方の一つとして、演説で扱いの大きかったものと小さかった(言及されなかった)ものに注目する方法がある。

演説内容は、明らかに国内政策志向であり、中心的メッセージは、 “Winning the Future” というスローガンの下、教育、R&D、再生エネルギー、インフラ等に積極投資することでアメリカの経済競争力を取り戻し、長期的雇用創出へつなげよう、というもの。

議会選挙大敗の反省も受けて、国民の関心が景気回復、中でも雇用問題であったことを受けて、同課題を中心に据えたと理解できる。しかし、毎月、毎四半期の雇用統計が政権や議会の通知簿になっている感があり、向こう1月、四半期、半年、1年、「雇用創出にオバマ政権は具体的にどのような手を打ったのか」と常にメディアや国民から突きつけられている状態を、政権が嫌ったのであろう。

仮にGDP成長率などで景気回復基調が顕著になり、安定し始めたとしても、雇用が増え始めるにはたいてい時間的なラグがある。米国内の景気見通しとして緩やかながら回復・安定に向かっていると見られているとは言え、2012年大統領選挙キャンペーンのタイムテーブルとの絡みで、短期的な雇用創出政策で成果を出そうとしても間に合わない、または、成果があったとしても政権への支持率を大きく跳ね上げるほどの効果は期待できない、との政治・選挙戦略上の判断があったもの考えられる。

従って、雇用問題を真正面から取り組む姿勢を全面的にアピールしつつも、同問題を「リフレーム」(枠組みを変える)しようとする意図が見て取れた。


扱いの小さかった外交と長期財政再建

P012511ps0612_0

今回の演説は国内外の各政策分野を網羅した長いリスト (“laundry list”) にはならないとホワイトハウス報道官の事前のコメントの通り、力点が明確だった分、扱いの小さかった政策分野の関係者からのバックラッシュがあった。

一つは、外交政策コミュニティ。イラク・アフガニスタンは、「撤退する」がこと以外に特筆することは無く、新しい動きとしては、ブラジルをはじめとするラテンアメリカ地域へオバマ大統領が歴訪すること。核不拡散、イラン、北朝鮮に関しては、これまでの政権方針をくりかえしただけ。中東和平に至っては、言及さえされなかった。これに対して、当然不満や懸念の声は少なからずある。

しかし、オバマ政権が外交的に内向きな政権に転換するとまでは言いすぎであろう。演説の焦点が国内政策、競争力、雇用に置かれた理由は明らかであるし、オバマ政権の外交・安保上の政策イニシアティブも大きな変化無しに継続されるだろう。ただ、こうした外交政策の扱い、国内政策の強調の極端さを見て、多くの政治アナリスト・選挙戦略家たちは、オバマが今回の教書演説を皮切りに本格的に「2012年のキャンペーンモードの入った」ことを指摘している。

もう一つ見逃してならないのは、長期財政再建の扱いを、事前に想定されていたより驚くほど縮小してしまったことだ。オバマ大統領が、(税制の抜本改革など、ざっくりとした案もあるが)具体策として提示したのはただ一つ。 “non-defense, domestic discretionary spending”、つまり、連邦予算から社会保障支出など義務的支出を除き、さらに、裁量支出から防衛費を除いた残り予算を、向こう5年間増減なしで凍結することである。

この対象予算分野は、防衛費の定義の仕方で若干数字が変わるが、連邦政府総予算額の14~16%程度に満たず、ホワイトハウスはこれによって向こう10年間で4,000億ドル以上の節約になると試算しているが、これでは、総支出の1% の節約にも届かない。

これに対しては、不満や懸念レベルではなく、「財政の番犬」(“fiscal watchdog”) と称される財政的に中道から保守への勢力から一斉砲撃が始まっている。この勢力にとっては、オバマの医療制度改革も、長期的なコスト削減に踏み込めなかった点で大きな失望であったが、自らが設置した財政諮問委員会が、予想を上回る高評価を得る政策提言に結びつけたにもかかわらず、今回の演説で本腰を入れる方針を示さなかったことから、また大きな失望であり、残り二年のオバマ政権を既に見放す声も聞かれる。

オバマは、競争力強化の文脈で、政府への信頼回復に言及しているが、ドルや国債の市場の信頼については、手を打とうとしなかったことになる。結果的に最大の債権国である中国への依存を強めることになるのは明らかで、中国の台頭にさらに拍車をかけることになりそうだ。

------------------------------------------
Photo Credit (for all three of them): White House

|

オバマ政権と新議会(4)

オバマ政権の外交政策と新議会

秋の議会選挙は、9.11同時多発テロ以降例にない、外交や安全保障が全くと言ってよいほど争点にならない選挙だった。従って、新議会の政策志向としてオバマ政権のアジェンダとどこまで折り合うのか、折り合わないのか、測り難いところがある。しかし、議会内でのパワーシフトや同ブログ更新(1)~(3)に述べてきた国内政策情勢の見通しから、次のようなポイントが挙げられると考えられる。

第一に、国内政策においては、ねじれ、二極化し、党派争いが熾烈化する中で、あらゆる政策分野でこう着状態に陥る可能性があり、景気回復を第一優先に引き続き政策運営を行いつつ、より長期的な視点から包括的な財政再建政策に政治的意思を注ぐ、難しい舵取りがオバマ政権に求められる。しかし、オバマ政権にとって国内政策で具体的な成果が見い出しにくい可能性が高く、その分、政権全般の評価を上げるために、外交や安全保障上の成果に頼るところが多分に出てくると考えられる。

第二に、こうした外交面での実績追求に政権としてウェイトを高めていく上で、より積極的な外交、安保上の関与を主張する共和党保守派が議会で勢力を増すことは、オバマ政権にとって追い風になる局面も出てくると予想される。

安全保障上の優先はどの国、地域との関係か。最初の優先は、上院におけるロシアとのNEW START批准作業であろう。START Iが昨年末で失効し、START IIも2012年末に失効期限が迫っていると言うこともあるが、同案件は、上院共和党側からも、サポートを示唆する声が上がってきており、本来は年内の採択を目指していたものである。2/3以上の賛成票の確保も、早い段階で可能だと考えられる。

その他は、中東和平交渉、イラク・アフガニスタンの駐留、撤退プロセスの問題、イランの核問題などである。核の脅威に関しては、北朝鮮問題も挙がってきてもおかしく無さそうなものだが、議会における北朝鮮の核の脅威については、他の地域にいおける同様の脅威に比べて、若干聞き認識や取り組みに対する優先順位として落ちる印象がある。

これらのどの国、地域への取り組みを強化するにしても、オバマ政権としての意思、議会からの政治的サポートは、オバマ政権前期に比べれば、より期待できる状況が予想される。ここまでには、日本にとっても歓迎できる点と考えて良いだろう。

しかし、第三のポイントとして、上に述べた財政再建への取り組みが本格化する中で、これまで裁量的費用の中でも義務的費用に近い扱いを受けてきた防衛費にもメスが入ってくる可能性が考えられるだけに、政権として米国の関与に積極的な意思を示しながらも、予算的な制約が実際の関与を消極的にしたり、同盟諸国の平等な貢献や貢献の拡大により厳しい要求を示すようになってくると考えられる。この点は日本政府にとっても、基地移転問題、海外紛争地帯の復興支援、途上国の貧困撲滅などを米国と進めていく上で、心しておくべきであろう。

四つ目のポイントは、一つ目と大いに関連するが、オバマ政権前期の後半に見られたように、自由貿易拡大によって米国内の雇用創出、長期的な経済成長機会の確保、経常収支のバランス化などのための経済外交熱が一層高まると考えられる。矛先の一つは、確実に中国の人民元為替問題に向けられるだろう。議会の共和勢力にも助長され、米中戦略対話、G20、APECなど、二国間、多国間での通商交渉の場で、米国の中国への批判の論調が厳しくなることが予想される。しかし、中国が急に態度を軟化し、人民元の為替上昇を加速させるとは考えにくい。

そこで、経済・通商外交の具体的成果を求める先は、自由貿易協定の交渉に求められると考えられる。オバマ政権前期においては、対外的には、イラクとアフガニスタンの危機対応、国内的には、経済危機対応とその後の医療制度改革に追われ、通商交渉が後回しにされてきたと言って良い。しかし、オバマ政権後期においては、同分野が最優先外交政策分野として浮上してくるだろう。

まずは、KORUSの批准手続きである。自動車や農産物で互いに譲歩しての合意であるだけでなく、経済規模の差から、米国経済へのメリットとしては、それほど大きなインパクトが無いとの専門家の分析もあるが、環太平洋地域の自由貿易推進の観点から、象徴的に重要な意味合い――日本、中国、ASEAN、インドなど、アジア地域の主要プレーヤーに大いに刺激――を持つと考えられる。

日本が管政権の下で参加を検討しているTPPについても、オバマ政権は、これまで参加の意思表示こそすれども、交渉締結に向けて積極的かつ具体的なリーダーシップを発揮してこなかった。向こう一年、同案件でオバマ政権の姿勢が大きく転換する可能性がある。周知のように、2011年秋のハワイAPECで米国は議長国の役目を果たす。同会議の重要成果の一つとして、TPP交渉で具体的成果を挙げることを狙ってくる可能性は高い。従って、日本政府が、同案件に「後からやってきた賛同国」ではなく、「交渉を方向付けるメイン・プレーヤー」として参加する意思があるのであれば、新年に入って加速する可能性のある米国の動きを注視しつつ、日本国内の意思決定と戦略策定を急ぐべきだろう。

|

オバマ政権と新議会(3)

オバマ政権後期の目玉政策分野――包括的財政再建政策

足元の景気状況から、毎月発表される雇用統計に表れる新規雇用と失業率が、ワシントンの通知簿になってしまった感がある。それだけ、目先の動向にとらわれた日々の政治、政策論争にワシントンが覆われている。こうした中、共和党が勢力を増した新議会を迎え、オバマ政権後期の国内政策を見通すと、目玉となるのは包括的財政再建政策となりそうだ。

個人的な見解だが、この一年ほどで、ワシントンで変わったことが二つある。一つは、先進国の政府セクター発の金融・経済危機への危機感が、ワシントンでも深刻に捉えられるようになったことだ。先進経済国で特に深い爪痕を残した2008年以降のグローバル経済危機であったが、景気回復のための大型財政刺激策を各国が次々導入し、予算赤字や政府累積債務が雪だるま式に拡大していく中で、ギリシャやアイルランドのようなケースが見られるようになった。1990年代までのグローバル経済・金融危機と言えば、ラテンアメリカ、東南アジア、韓国、ロシアなど新興市場圏を駆け巡るというイメージがあったが、2008年には、アメリカの金融・資本市場がそのきっかけを作ってしまった。さらに、こうした欧州諸国の財政問題が、足元の危機からの回復期に新たに飛び火する危険性だけでなく、国内や海外投資家から信用を失い見放された一国の財政、経済が、いかに経済的競争力を奪われ、長期に渡ってその痛手に苦しまなければいけないのか、ワシントンにもその様をまざまざと見せつけることになった。

もう一つワシントンで変わったことは、これまで公的年金、メディケア、メディケイドなど、プログラム単位でも改革に手をつけることは「政治的自殺」とされてきたが、このような義務的経費を除いて、さらに裁量経費から防衛費を除いた残りのわずかな政府支出の財布をいくら振ったところで、出てくる経費削減には限界があり、とてもではないが現在の財政状況と今後のトレンドを好転させるような改革にはならない、との認識が広がり始めたことだ。言い換えれば、米国の財政再建には、歳入、歳出の全てのアベニュー、予算作りのプロセス、財政規律を保つための法的規制を、まとめて見直さなければいけない時が来ている。「やるか、やらないか」ではなく、「どのような案を、どのように導入していくのか」を具体的に議論すべき時に来ている、との認識の広まりだ。

但し、こうした変化を受けて、オバマ政権と議会の財政・予算関連委員会の有力議員が、前向きに動き始めたからと言って、この分野がオバマ政権後期において、最も成果を収めて政権の実績として評価されるかと言えば、そうではない。前期における医療制度改革がそうであったように、後期における包括的財政再建政策が、オバマ政権にとって最も大きな「政治的な意思」を費やす分野となりそうだ、ということである。

メディア報道では、オバマ大統領の諮問委員会である財政責任・改革委員会の答申最終案に注目が集まりがち(政権・議会へ直接の提言権限を与えられている委員会だけにそれももっともなこと)だが、財政・予算の専門家や同分野の実務担当者らの間では、上述の答申最終案の他に、民間で設置された2つの専門委員会の提案が注目を集めている。

一つは、2007年に4名の上院院内総務歴任者に創設されたばかりのシンクタンク、超党派政策センター(Bipartisan Policy Center)の提案。大統領の諮問委員会が、現職の超党派議員を中心に構成されているのに対して、同センターの「債務削減タスクフォース」は、過去に政府・議会・FEDなどで予算・財政・金融政策で要職を歴任した専門家らによって構成されている。二つの提案には共通する部分が多分に見られるが、現職議員らの作成した答申最終案のほうが、より政治的現実を反映し、タスクフォースの提案は、専門家らのコンセンサスを反映していると言える。

Rivlina_portrait

そしてもう一つの提案は、ピーターソン財団が主催した「予算改革委会」が作成したものだ。同案の特徴は、具体的な歳入・歳出を対象とした提案はせず、政権・議会による予算作成のプロセスや中長期的に財政規律を保つための法的規制や仕組みづくりに焦点を当てている点である。ちなみに、これら3つの委員会全てに参加している人物が一人だけいる。CBO創設時の初代局長、クリントン政権OMB局長、現在は、ブルッキングス研究所上級研究員を務めるアリス・リブリィン氏(右写真)である。彼女の同分野専門家としての圧倒的な権威が伺える。

1) National Commission on Fiscal Responsibility and Reform

Fiscalcommission

2) Bipartisan Policy Center’s Debt Reduction Task Force

Bpc

3) Peterson Foundation’s and Pew Charitable Trusts’ Commission on Budget Reform

Pewpeterson

従って、メニューは揃っている。後は、オバマ政権がどの程度「政治的意思」をつぎ込み、改革議論をリードするかにかかっている。医療制度改革の時のように、改革議論の方向性だけを示して、実際の議論の詰めや法案作成を議会にまる投げするようなことをすれば、新議会の「ねじれ」パワー構造、政治思想の二極化、党派間の争いの中に、財政改革議論は埋没してしまうだろう。

オバマ政権の覚悟の程と進捗状況を測る節目として注目すべきは、2011年に少なくとも三度ある。一つは、新年早々、新議会の最初の争点になるであろう2011年度予算案を、どのようにまとめ上げるのか。かつてのクリントン大統領の時のように、最悪の場合、連邦政府閉鎖にまでもちこまれるのか。(個人的には、そうなった場合の、経済回復や国民生活の悪化と、その政治的責任を負わされるリスクを避けるために、ギリギリで妥協がなされると考える。)二つ目は、新年の一般教書演説の国内政策のセクションにおける同改革案の扱いである。そして三つ目に、2012年度の予算作成プロセスの中で、同改革案をどこまで盛り込めるかである。

(その4へ)

|

«オバマ政権と新議会(2)